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PHẦN NÀY DÀNH CHO GIÁO VIÊN

TRƯỚC KHI VÀO GIÁO TRÌNH MINNANO NIHONGO

 

日本語ボランティア教師養成テキスト

 

1.   第1課に入る前に

 

1)日本語の特徴

・日本語は日本国内に住む日本人およびその日本人が主に移民した中南米に住む日本人の間で話されている。 即ち日本語は日本人という単一民族のみが使用している言語である。(中南米に住む日本語を話す人たちは 日本人ではないが、日本語を母語としているという意味で日本人と考える。)日本の人口は現在1億3千万 人ほどいて話者数の順位は世界第9位である。

・日本語学習者は韓国の90万人、中国の40万人、オーストラリアの約40万人をはじめ、アジア、大洋 州を中心に約235万人となっている。

・日本語の文の構成は「主語(subject)・修飾語(modifier)・被修飾語(modified)・述語(predicate)」の順序 で構成される。即ち述語となるものは名詞(noun)、動詞(verb)、形容詞(adjective)等があるが、この述語が 必ず文の一番最後にくる。

名詞文      わたしはマイク・ミラーです。

動詞文      わたしは9時から5時まではたらきます。 形容詞文    さくらはきれいです。

また修飾語は必ず被修飾語の前にくる。

わたしの本、    かわいいあかちゃん    きれいな花    早く起きる  とても寒い 名詞の格(主格、所有格、目的格等)を示すのに語順や語尾を変化させるのではなく、文法的な機能を示 す機能語(助詞・particle)を後ろに付け加える(膠着させる)。 これらの事から言語類型論上は、語順の点ではSOV 型の言語に、形態の点では膠着語に分類される。

2)日本語の発音とかな

・日本語の発音を構成する最小の単位を拍(モーラ)といい、50音図の1音と1拍が対応する。この意味 から50音図のかな1文字を日本語の発音記号と考えることもできる。この考えでいくと、かなを覚える ことにより日本語の初心者でもかなで書かれている文はアクセントを抜きにすれば一応は日本語を読める。 また日本語では促音(っ)、撥音(ん)、長音(-)も1拍と数えるのが特徴である。

・日本語の等拍性といい日本語のすべての拍は時間的に同じ時間をもつ。この点も英語等の発音とくらべる とはるかに簡単で単純と言える。(日本語はリズム感に乏しいという印象をもつのはこのためである。)

・モーラの種類は以下に示すように111程度存在するが、濁音である「が行」の音は語中語尾では鼻濁音 となるがこれを拍と数えないと数は減る。また外来語の表記の関係で「シェ」「チェ」「ツァ・ツェ・ツォ」

「ティ」「ファ・フィ・フェ・フォ」その他の外来音を含めるとさらに数は変わってくる。(しかしこれら の音は外来語を表記するために考えられたものと考えると元来の日本語の発音とは言い難い。)

・日本語のモーラは5つの母音(vowel)と子音(consonant)の発音に母音が付加されたもの、半子音に母音が付 加されたもの、それと拗音、促音、撥音、長音からなる。ここで母音とは口の形と舌の位置を変えること によって発音される音でありその音をある時間続けることが可能である。子音とは呼気と唇、呼気と舌と 歯茎、口蓋等を使って発する音である。そのためその音を拍以上の長さで続けることは不可能である。半 子音とは母音と子音の中間の音でやはりその音を拍以上伸ばすことはできない。

・50音図

直音  (母音)

あ  い  う  え  お

直音  (子音+母音)          拗音

 

きゃ きゅ きょ (清音)
しゃ しゅ しょ (清音)
ちゃ ちゅ ちょ (清音)

 

にゃ にゅ にょ
ひゃ ひゅ ひょ
みゃ みゅ みょ
りゃ りゅ りょ
ぎゃ ぎゅ ぎょ (濁音)
(か  き  く  け  こ)        (きゃ    きゅ    きょ)    (鼻濁音)
じゃ じゅ じょ (濁音)
(濁音)
びゃ びゅ びょ (濁音)
ぴゃ ぴゅ ぴょ (半濁音)

 

直音 (半子音+母音)
ゆ  よ        わ

 

特殊モーラ

ん(撥音)      っ(促音)    ―(長音)

・長  音(long vowel) 長音は1拍の長さをもつ短音に対して2拍の長さをもつ音で、ある1語の単語の中で前の拍の母音をもう 1拍延ばして発音される。長音で発音されるか、されないかで意味が変わる場合があるから注意させる必 要がある。

おばさん  →  おばあさん        おじさん  →  おじいさん 初級授業の中では特に長音で注意しなければならないことは発音と表記の違いが出てくることで、

おとおさん(お父さん)の発音に対し表記はおとうさんであり、おなじく   おとおと(弟)  →  お とうと、        ええご(英語)→  えいご、  ええが  →  えいが(映画)    等である。

これに対し  大きいは  発音、表記ともにおおきいであり、遠いも同じくとおいとなる。2語とも初級レ ベルの語であるのでその他の初級語でも出てきたときに注意を促したい。 又カタカナ表記では長音は前拍の母音を使わずに長音記号“―”を使うことも教える時に留意されたい。

コーヒー、エアメール、カード  等

・撥  音(Japanese syllabic nasal)

「ん」の音はうしろに来る音によって、発音のしかたが変わる。(変音) えんぴつ        「ん」の発音時に唇が閉じていることに注意させる。

みんな    「ん」の発音時に舌が上歯茎の裏についていることに注意させる。 てんき          「ん」の発音時に口が開いていることに注意させる。

・促  音(geminate consonant) 表記においては語中の促音が入るところは「っ」で表わされる。発音においては拍と拍との間にあって発 声しない拍として扱われる。促音があるとないとでは違う言葉になってしまうので促音も重要な発音表現 であることを認識させる必要がある。授業においては拍を手拍子で取りながら発話させ語中に 1 拍の休止 があることを理解させる。初級においては助数詞あるいはⅠグループの動詞のて形に多く出てくるのでそ れが出てきた時に教えたい。

1 杯、1 本、言ってください、行ってらっしゃい、待ってください おと      cf     おっと、    ぶか  cf   ぶっか    等

・アクセント(accent)

アクセントとは 1 語の発音の中である部分を強く言ったり弱くいったり、あるいは高く言ったり低くいっ たりする、1 語の中の発音の強弱、高低の配置のことである。日本語のアクセントは高低アクセントであり この日本語のアクセントには規則性がある。ある拍の直後でアクセントが高から低に下がる時、その拍を アクセントの核といい、アクセントが高から低に下がるところを下がり目という。アクセント記号では   の

ように表す。「箸」は第 1 拍、「橋」は第 2 拍にアクセント核があり、「端」にはアクセント核がない。アクセント核は一つの単語には一か所もないか一か所だけある。従って一度下がったアクセントが再び上がる ことはない。即ち高い拍は一拍だけか、連続した数拍化であり、離れた二か所以上に現れることはない。 また共通語(東京アクセント)では単語の第 1 拍と第2拍の高低が必ず異なり、単語と単語の切れ目が分 かりやすくする機能をもっている。高い拍が一か所だけしかないという事からある単語の下がり目の位置 が決まれば単語中の拍の高低が決まる。単語が持つアクセントの型には3型ある。即ち第 1 拍にアクセント核があるもの(下がり目が第 1 拍のすぐ後ろにある)を頭高型、第 1 拍と最後の拍の間にアクセント核 があるもの(下がり目が語中の間にあるある)を中高型、最後の拍が高で終わり次に続く助詞に低アクセ ントを要求するもの(下がり目が語の最後にある即ちアクセント核が語の最後にある)にあるものを尾高 型といいこれらをまとめて起伏式のアクセントという。これに対し最後の拍が高で終わり次に続く助詞も そのまま高で発音されるもの(下がり目がない)を平板型、平板式という。

頭高型    はし(箸)、ほん(本)、ちず(地図)、あめ(雨)、はいしゃ(歯医者、敗者)、ひ(火) 尾高型          あめ(飴)、いしゃ(医者)、はいしゃ(廃車)、おちゃ(お茶)はし(橋)

中間型    たまご(卵)、おとうさん(お父さん)、おかあさん(お母さん)、かいぎしつ(会議室) 平板型          さくら(桜)、けむり(煙)、たばこ(煙草)、ひ(日)、はし(端)

アクセントの機能:アクセントはなぜあるのか。日常使う日本語には同音異義語がいくつかある。(箸、橋、 端)、(型、肩、方過多、潟)(雨、飴、天)(事、琴、古都)(紙、神、髪、加味)・・・・・これらの同音 異義語でアクセントを変えることにより語の意味を区別していると考えられる。即ちアクセントは語の意 味を区別する機能を持っているということができる。また次の文においてもしアクセントがなかったら誤 解を生じる。

アノヒトハキョウヨウガアル。  (あの人は教養がある) アノヒトハキョウヨウガアル。              (あの人は今日、用がある) アノヒトハキョウカイニイク。          (あの人は教会にいく) アノヒトハキョウカイニイク。              (あの人は今日、会にいく)

上の2つの文も下の 2 つの文も書いた文では文節の切れ目及び書き言葉が異なるので一目でその意味が分 かるが、話した場合切れ目なく一気に発話されるとアクセントに違いがなければ意味は不明である。従っ てアクセントには語や文節の切れ目を示すというもう一つの機能をもつことがわかる。 動詞・形容詞のアクセント:アクセントについて主に名詞についてやや複雑な規則を述べたが、動詞、形 容詞についてもある規則性がある。まず動詞はアクセント上分類すると以下の2つだけに分類される。

平板式    キク(聞く)  ワラウ(笑う)  ハタラク(働く)  ウル(売る)  オドル(踊る) タタカウ(戦う)            シル(知る)    アビル(浴びる)  アマエル(甘える)    ネル(寝る)

起伏式    カク(書く)  オモウ(思う)  ヨロコブ(喜ぶ)  ヨム(読む)  ツクル(作る) カナシム(悲しむ)   ミル(見る)   オチル(落ちる)   ヒキイル(率いる)   デル(出る)

ここで見られる規則性の第 1 は起伏式の動詞では辞書形のとき拍に関係なく後ろから 2 拍目にアクセン トの核がくる。また平板式の動詞ではどんな活用形でも語尾は平板式であるが、3 拍以上の起伏式動詞の 時には   て形、た形のときにアクセントの核が前に一つずれる。形容詞についても同様に分類される。

平板式    アカイ(赤い)  ツメタイ(冷たい)  カルイ(軽い)  カナシイ(悲しい)

起伏式    ヨイ(良い)  シロイ(白い)  ミジカイ(短い)  ナイ(無い)  タカイ(高い) タノシイ(楽しい)    ウレシイ(嬉しい)

日本語教育では動詞、形容詞を教える際その辞書形が平板式か、起伏式であるかを教えればアクセント と活用の際のアクセントが見当できることになる。 その他:その他以上の規則にあてはまらないアクセントの核の移動が特別な語について発生するが、専門 的となるので生徒からの質問が出た時に対処することでよい。

かえる(帰る)        はいる(入る)おおい(多い)    くる(来る)

日本語のアクセントは、方言ごとの違いが大きい。特に広範囲で離され話者数も多いのは東京式アクセン

トと京阪式アクセントの 2 つである。日本語教育では原則として東京アクセントを共通語として用いるが、 時と場所に応じて京阪式があることと、その違いを教えてもよい。

はなが(花が)    東京式    はなが(低高低)  京阪式    はなが(高低低) みずが(水が)、とりが(鳥が)、かぜが(風が)   東京式            (低高高)          京阪式  (高高高)

・イントネーション(intonation) イントネーションとはアクセントが語を単位とした音の高低を問題にしたのに対し、イントネーションは 発話される文または句の中の末尾の音の高低を扱う。話し言葉の中で現れるものなのでイントネーション は大変、変化に富みかなり個人的なものとも考えられるが、社会的習慣によりその形がある程度固定して いるとも言える。 イントネーションの種類と機能:イントネーションは感情的なものと論理的なものとがある。 感情的イントネーションは発話に伴う話し手の感情によって現れるもので、話し手の細かい感情がこのイ ントネーションによって相手に伝えられる。

トンデモナイ    (普通の状態)    トンデモナイ、トンデモナイ  (感情が強く入った時) 普通の会話の中ではイントネーションだけでかなりの感情表現を表すことができる。

会話1      太郎:「帰る?」 花子:「帰る」

会話2      太郎:「帰る?」 花子:「帰る?」

句末に上昇調のイントネーションが現れる場合は相手に分からせようとする感情が入る場合が多い。

「キョウハ  ニホンゴノ  イントネーションニツイテ  ベンキョウシマショウ」 日本語教室で生徒にこのイントネーションで話すのがよく見られるのも、このためである。(しかし生徒に はできるだけ自然のイントネーションで話しかけるのが望ましい。) 論理的イントネーションは話し手の感情に関係なく、その文におのずから備わっているイントネーション をいう。即ち平叙文(affirmative sentence)、疑問文(interrogative sentence)において前者は文末を平坦調 のイントネーションで終わるが、後者は文末を上げる上昇調のイントネーションで終わる。これはその文 の持つ話し手の意図によってすで決まっているイントネーションである。 イントネーションの型:イントネーションの型には1)平坦調                    2)上昇調1         3)上昇調2  4)下降 調  5)特殊な型    の五つの型がある。 平坦調は普通の平叙文に現れるもので、平叙表現には主に断定、主張、勧誘、不満、要求などがある。

「うまい」「これでいい」「えんぴつではちょっとまずい」「そのばあいはこれをつかってください」 上昇調1は主に、質問的表現(質問、問いかけ、反問、確認要求)に伴う。

「しんぶんはいたつのひとですね」「きじゃなくたけですか」「おとこ?」「あしたいく?」 上昇調2は話し手が自分の述べようとするところを強調するまたは同意を得ようとして文末を特に際だた せる時にあらわれる。この時文末の最後の音節全体が強く発音され、全体的に高まっているのが上昇調1 と異なる。

「そんなことしていいとおもってるの」「そうでしょう」「そうおもわない」 下降調は話し手が相手に対して不満の態度、感情あるいは軽蔑の気持ちを表すときによく見られるもので 文末が急に下がるのが特徴です。また文末に「よ、か」などの終助詞を伴う事が多い。

「そんなことないですよ」「よのなかめちゃめちゃじゃないですか」 特殊な型は文末に「な、ね、よ、さ」など、主に間投性終助詞を伴う場合によく現れるもので、発話の中 で話し手の感情がよりはっきりと表現される。

「おどろいたわねー」  「ひどいなー」  「どういうつもりなんですかねー」

会話の中で

「よく、はたらくわねー」  「よく、はたらくわよー」

「おどろいたわねー」    「おどろいたねー」

2.  どんな生徒たちに、どのように、どんな日本語を教えるか。

1) 私たちの日本語教室の性格:私たちは現在伊東国際交流協会の中の日本語教室で日本語を教えている。 時間的として 1 週間に 1 度午前午後合わせて 3 時間という非常にわずかの時間であり又来る生徒たちも さまざまである。先生方も100%ボランティアの無報酬の先生がたである。普通一般の日本語教育と いう面からみるとファミリー的ではあるけれど、いかにも間に合わせ的な感じであるのを逃れえない。 といっても今まで、約11年になろうとする間に教室ではたくさんの生徒たちに日本語を教え、能力検 定試験の合格者も多数送り出してきた。このように小規模であり教える時間も決して多いとは言えない 教室であるがやる気があればそれなりの働きをすることができるといえる。そのような意味で私たちが、 この教室でいかに効果的に生徒たちの日本語習得意欲に力を貸すことができるかを考えることは重要で ある。そこで今まで伊東日本語教室にどのような生徒たちが多く来たか、また数は多くはないがこの生 徒にとって今、日本語の習得は緊急の問題でありかつ日本語の習熟がこの生徒の将来を左右しかねない という生徒たちに対してどのように教えるか、というように今まで伊東の日本語教室に来た生徒たちを あるグループ毎に分けそのグループ毎の生徒たちにどんな日本語を教えるかを検討していけばそれなり に効率的な、生徒たちが本当に勉強したいところの日本語教育を与えられるのはないかと考え、話を進 めたい。本題に入る前に生徒の日本語の能力をチェックする意味で能力検定試験におけるレベルの大ま かな判定基準と試験の構成の表を下記に掲げる。

 

認     定     基     準
類    別 時  間 配  点
文字・語彙 45分 100点 高度の文法・漢字(2000字程度)・語彙(一万語
聴     解 45分 100点 程度)を習得し、社会生活をする上で必要であるとと
読解・文法 90分 200点 もに、大学における学習・研究の基礎としても役立つ
ような、総合的な日本語能力。(日本語を900時間
合  計 180分 400点 程度学習したレベル)
文字・語彙 35分 100点 やや高度の文法・漢字(1000字程度)・語彙(6
聴     解 40分 100点 000語程度)を習得し、一般的なことがらに対し、
読解・文法 70分 200点 会話ができ、読み書きができる能力。(日本語を60
0時間程度学習し、中級日本語コースを修了したレベ
合  計 145分 400点 ル。)
文字・語彙 35分 100点 基本的な文法・漢字(300字程度)・語彙(150
聴     解 35分 100点 0語程度)を習得し、日常生活に役立つ会話ができ、
読解・文法 70分 200点 簡単な文章が読み書きできる能力。(日本語を300
時間程度学習し、初級日本語コースを修了したレベ
合  計 140分 400点 ル。)
文字・語彙 25分 100点 初歩的な文法・漢字(100字程度)・語彙(800
聴     解 25分 100点 語程度)を習得し、簡単な会話ができ、平易な文、ま
読解・文法 50分 200点 たは短い文章が読み書きできる能力。(日本語を15
0時間程度学習し、初級日本語コース前半を修了した
合  計 100分 400点 レベル。)

・ 中国人旅行サービスビジネス研修生:今まで伊東日本語教室に迎えた生徒たちのうち、最も生徒数の 多いグループがこのグループであろう。この生徒たちの特徴としては、

ⅰ)既に中国内で日本語を1年~2年学習しているので初級レベル(日本語能力検定4~3級)は 終了している。従って学習意欲は中レベル以上の日本語を目指している。

ⅱ)日本人企業の中で既に働いているので、日本人企業内の規則、習慣等も学習中である。 ⅲ)研修先がホテル、旅館であるため日本人の旅客と接する機会が多く正しい敬語の習塾が緊急で

ある。 ⅳ)研修期間がほぼ1年であるため教室での学習期間も1年であることが多い。

ⅴ)在日中に日本語能力検定3~2級を目指す生徒もいる。(目指す生徒には教室としてもこれを 最大の目標として教えても良い。)

このような生徒に対して教室では

ⅰ)テキストとして「テーマ別 中級から学ぶ日本語」を主に使用してきた。ここでは日本の社会 生活・家庭生活の中でおきる出来事、話題、(テーマ)を日本人が中文の長さで書いた文章が はじめに掲げられており、これを基にして日本人の生活習慣、文化的なもの、考え方などを学 びそれと同時に日本語の学習として中級程度の語彙、やや複雑な日本語特有の言い回し、慣習 的言い方等を学ぶものである。初級の日本語に比べてより日本語らしい日本語、普段日本人が 話したり書いたりする日本語により近い日本語を学習するといえる。

ⅱ)それだけに初級の日本語を十分に習得していない生徒には若干理解に無理なところがあり、ま た教師側でもそれなりに日本語教育での技術(文法的知識)が必須となってくる。十分に初級 をマスターしたと見える生徒についても、たえず初級的な必須事項を確認しながら、まちがっ ていることがあったら再修正をし、あやふやなところはノートに取らせるなどして初歩的なミ スは繰り返させないような配慮が必要である。

ⅲ)ある程度初級をマスターした生徒にはこのテキストは日本の生活習慣を日本語を学習しながら 知ることができるという点で優れたテキストだと思われるので、生徒に意欲があれば積極的に 使って行ってよいテキストだと思われる。

・ 日本人と結婚された外国人:中国人研修生についで多いのがこの人たちではないかと思われる。教室 が発足して11年あまり経とうとしているが、それ以前から日本に来て仕事をしているうちに結婚し た人、あるいは最近多く見受けられるケースで日本人と結婚するために日本に来られた人たちで特に 中国人、フィリピン人の人が多い。そのような生徒たちの中でまずあげられるのが

ⅰ)日本で比較的長く生活している非漢字圏の人:この人たちは主に女性に多く、子どもも大きく なって小学校の高学年になり、子供は日本語に何の不自由もしていないが、自分はまだ漢字も 満足に読めない、従って学校からの通知もよくわからない、せめて初歩の漢字くらいは読める ようになりたいと言って来られる人がいる。中にはこの日本語教室の OB という人も来られる。

このような人たちは既に日本語の会話については略問題ないので彼女たち一人一人の要望 に応えて漢字学習については3~4級程度の漢字を初めは読み(音読み、訓読み)から徐々に 書く練習を正しい書き順で学習させていくのがいいと思われる。この時漢字学習に興味を持た せ、あるいは効率的に学ばせるために漢字の成り立ち、漢字の構成からみた漢字の種類(象形、 指事、会意、形声漢字等)漢字の発音等について話をするのも面白いと思われる。いずれにせ よ漢字の数はかなりの量があり、最初のうちはその数に圧倒されて学習意欲が低下しないよう できる範囲で気長にやることを教えなければならない。

ⅱ)漢字圏の人:中国系の人(中国人、台湾人、中国系マレーシア人)の人たちは既に漢字を使っ ている人たちであるが、現代の中国人のように、日本で使われていない略した漢字(簡体字) を使っている。特に若い中国人は現代の日本の漢字を理解できない人もいたり、または特定の 漢字を読めない人がいるので日本の漢字を教えることが必要となってくる。台湾人は旧漢字

(繁体字)を使用しているが、漢字によっては日本で使われている字体と違っている時がある ので注意が必要である。

・ 日本語ができない小学生、中学生:このグループ分けの中で特に問題としておきたいのが、この生徒 たちである。(伊東市ではフィリピン人の家庭の子女たちが多い。)この生徒たちは日本の学校で勉強 しなければならないという意味から日本語の習得が特に緊急な生徒たちである。日本語のレベルも全 くの初歩段階から教えなければならないことが多く、またその緊急性のために週一回の授業以外に授 業をすることもある。いずれの場合も通学している学校側と十分連絡を取り合って、効率的な授業を 生徒の負担とならないよう気をつけて行う必要がある。

・  日本語にあまり習熟していない人:日本に来られて長くいるけれどあまり日本人と交際のない人、日 本に来られて日の浅い人などは初歩的な日本語もできないという人がいる。 このような人たちには全くの初歩からの学習となり、「みんなの日本語初級Ⅰ」がテキストとなる。 この日本語学習の初心者に対する教え方が教室の本来の指導法であり、日本語教育が目指すところ でもある。従って私たちはまずこのために日本語教育の技術を勉強しなければならないし、今回の 研修もこの技術を磨く事を第一の目標として進めていきたい。

3.  授業の進め方

1)理想的な教師像(日本語教師養成講座からの抜粋)

・日本語を学習者の立場に立って、外国語として客観的に分析する能力を養うこと。

・自己の知識を再確認する習慣をつけること。

・発音の違いを聞き分けたり、書き留めたりする練習を積むこと。

・自分で文を多く書き、推敲する能力を身につけること。

・日本そのものについて熟知すること。(地理的な日本、日本人の歴史、日本の文化、習慣、国民性・・・)

・生徒とのコミュニケーションを積極的にとり、あきさせないまた効率的な授業を心がけること。

・生徒との違いを知り、認め、尊敬できる態度を身につけること。

・明るく、忍耐強く、思いやりと熱意をもって授業に対処できること。

2)どんな日本語を教えるか。

・です、ます調(丁寧語  polite language)の日本語を教える。 です、ます調は日常私たちの間ではあらたまった時以外使わない。それは日本人の間では丁寧語でありま た公用語であるからで、ふだん私たちの会話は家族だったり、外に出たとしても身分の高低差がない友達、 同僚、付き合い仲間であることがほとんどだからである。しかし日本語を勉強する外国人にとっては私た ち日本人は親しい友達でもないし、日本語を話す時はあらたまった場所で話す場合がほとんどである。も し外国人が私たちが日常話している日本語で話しかけてきたりしたら、私たちはびっくりしたり、むしろ 不快を感じることだろう。逆に道で見知らぬ外国人が丁寧にです、ます調で話しかけてきたとしたら私た ちはこのうえもなくその外国人に好感を抱くことであろう。このような意味で初歩の日本語を学習しよう とする外国人にはです、ます調を教えることが必須だといえる。

・できるだけ易しい、平易な日本語を使うよう心がける。 言葉には何通りもの言い方があって、偉い人ほど小難しい言葉を使いまわして自分の偉さを誇示しようと する。また「ものは言いようで角が立つ」というように言い方次第で相手を怒らせたり、喜ばせたりする こともできる。日本語教室での初級の日本語は易しい日本語ほどベストである。(しかしレベルを上げてい くに従って日本語のもつ微妙なニュアンスの違いも教えていかなければいけない。)

・文字の学習について 日本語にはひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字の4種の文字があるが、まず最初にひらがなの発音から 始め、順次カタカナの発音に入る。この学習がある程度進んでからテキストの各課に入る。助詞「は」、及 び「へ」の発音についてはテキストの実学習の中で教える。読めることにある程度習熟したらひらがなおよびカタカナの書き方に進む。漢字については無理に強いることなく本人の興味をそそりながら、できる

範囲内で気長に教えていくようにしたい。

4.  「みんなの日本語」を使って指導するうえでの留意点

 

1.教え方の基本姿勢:テキストを使って教えるのであって、テキストを教えるのではない。(大沼先生の講座 テキストからの引用)即ちテキストに出ている日本語だけを教えるのではなく、テキストの文法事項をもと にして、生徒が自分で実際に生活の中で、学習している日本語を使えるように、一般化し応用できるよう指 導する事が、教える側のまず第一に留意しなければならない姿勢である。

2.「みんなの日本語」の各項目毎の留意点を順を追って言う。学習もこの順を原則として進める。

1)文型 (sentence pattern):ここではその課で学ばなければならない基本文法事項を含んだ文があげら れているから、この基本文法事項をまず第一に教える。

例えば  第14課  では  文型  1.ちょっと待ってください。

2.ミラーさんは今電話をかけています。 の2つの文が挙げられている。この14課での文法事項は動詞の“て形”(て      form)を使った文の学 習であることを最初に指導する。最も基礎的な動詞文は第4課に初めて出てきて第7課まで動詞文を学 習するが、その活用形(conjugation)は“ます形”だけである。第14課で初めて他の活用形“て形” が出てくる。そこで動詞にも活用があること、(形容詞の活用については既出)その一つがて形である こと、て形を使った文型1,2の説明(1.においては、て形+ください    の形で人に何かを頼む時の 言い方、2.においては、て形+います                    の言い方で  動作が現在進行(progress)している表現)な どを行う。さらに動詞の各グループにおける  て形の作り方を指導する。  これらが基本文法事項であ る。

2)例文 (example sentence):ここでは文型において提出された文が会話の中で実際に使われている状況 を想定して掲げられている。従って例文の文は文型のそれより具体的である。またその場に応じて文 型の文を変化させて違う状況の表現を学習したりする応用問題的な場合もある。生徒の学習能力を考 えながら、生徒に余裕があれば、応用表現を学ばさせて行きたい。ここでの文を学習するときは、会 話がされている状況を前もって生徒に説明しておくことが、生徒の理解を早くするのに役立つと思わ れる。英語が理解できる生徒であればさらに英語表現と対比させて説明するのも一つの方法である。 3)練習 (exercise,                                   practice)A:    ここでは枠組み、網掛けの濃淡などで、構文、文法事項が一目でわか るように示されていて、文法理解を助けている。文型練習の基本となる「代入ドリル」(substitution drill)や「変換ドリル」(transformation drill)などの形を示しているのでここで基本的な発話練習を

行う。 代入ドリル:文型または例文の文の一部を入れ替えて、発話を繰り返す練習方法で、文型の一層の理 解と刷り込みを促す。それとともに応用力、語彙の豊富化をも目指す。絵やカード、実物、模型など を使用し、実際の場面を想定し単なる練習のための練習にならない工夫が必要である。 変換ドリル:平叙文(declarative sentence, assertive sentence)から疑問文 (interrogative sentence) 動詞の肯定文 (affirmative sentence)から否定文(negative sentence)、現在形(present tense)から 過去形(past tense)などの変換やいろいろな表現の述部(predicate)の変換の練習方法。文法理解 を促すとともに実際の会話の時に正確な表現を瞬時に言えるまで練習をさせる。

4)練習 B: 練習Bでは問題形式で学習を進めていくもので生徒がこの課で学習したことが実際に理解さ れているかを確認しながら進めていく。各問題の前には「例」が示されているからこの「例」を十分 理解している事を確認した上で練習を始めることが肝要である。イラストまたは問題の中で生徒にと って新しい語彙が出てきたか、必要としたら最低限のアドバイスを提供し(新しい語彙のみを教える) 答えはあくまでも生徒の発話にまかせるようにしたい。最初のうちはスピードは関係なく文法の理解 が最優先である。

5)練習C:練習Cでは文型が実際にどのような場面や状況の中でその機能を果たすかを理解させる。従

ってここでも会話が行われているシチュエーションの説明が大事であると同時に代入練習の会話でも あるので文型の理解を復習しながら行うのがよい。この時、代入部分を行う文が生徒にあたるよう役 割を決め先生と会話しながら行えばより自然の会話に近づけることができる。

6)会話(conversation, talk, dialogue):以上練習 A から練習Cを終えてから会話に移るようにしたい。 この順序で行うのは生徒が十分に学習事項に習熟した後に実際に近い発話を体験するためである。会 話の中では全部を生徒に読ませるのではなく、先生と生徒が会話のなかのそれぞれの人物の役割を担 当し(role playing)実際の会話をしているような発話をすることが大事である。ここでも生徒の理解 を確認しつつ、わかっていないようなら語彙でも文型でも説明しわからないまま進めることのないよ う留意したい。またこの会話はDVDでの教材があるので必要に応じて使っていきたい。

7)問題:問題は個人質問(personal question)、聴解(hearing、listening)文法(grammar)、読み物(reading) などがある。 個人質問および聴解:この問題は付録に回答スクリプトがついているので、これが回答となるように

先生が質問を作成し生徒に質問する。回答は生徒に口頭で答えさせると同時に書かせると書き取り の練習にもなるし、口頭で見落とされる誤りを見つけることができる。

文法:文法は必要ないと考える先生もいるが、母語を学習する幼児、児童はとにかく外国語を学習す る子供、青年以上の生徒には、外国語を効率よく正確に学習するという意味から文法は必須である。 特に初級、中級へと進んでいく段階においては基礎的な文法を積み重ねて、学習を進めていくこと になるのでできるだけ早く基礎的な文法の習得が肝要である。初期の文法必須項目としては

・品詞の区別の習得:名詞(noun)、代名詞(pronoun)、動詞(verb)、い形容詞(i-adjective)、な 形容詞(na-adjective)、副詞(adverb)、接続詞(conjunction)、助詞(particle)、

・動詞の活用形(conjugation)の習得:ます形、て形、た形、ない形、じしょ形、ふつう形

・形容詞の活用形(inflection)の習得

・助詞の習得:   は、も、の、を、が、に、へ、で、と、や、から、まで、までに、より、でも・・・

・文型の習得:名詞文、動詞文、形容詞文、これらの文の変換(平叙文、疑問文、進行形、過去形等)

・丁寧形と普通形:日本語を学ぶ外国人はまず丁寧形(です、ます形)を学ばなければならないこと はすでに前述の通りであるが普通の日本人が日常話す言葉は普通体がほとんどである。初級に おいても引用文の引用部には普通体を用いなければならない。従って初級のうちに丁寧形と普 通形があることを認識させる必要がある。

読み物:学習事項で構成された中文を読解し、理解したかどうか質問に答えるものである。生徒に音読 で読ませて、新出語彙があればできれば辞書で調べさせ内容が把握できたか口頭で質問しながら解答 を確認する。正しく回答できたらば、質問の追加あるいは学習者の個人的生活、体験、意見、知識な どを学習者の能力を見ながら進められれば学習者とのコミュニケーションがさらに深められる。

5.  教室内でよく使う言葉、日常の挨拶、数字について

日本語の学習をテキストを使って指導すると同時に、教室内で使う言葉、日常の挨拶、決まり文句、初歩的な 数字などを並行して教えて行くようにすることはスムーズな学習進行のうえで役に立つと共に学習者に、より 日本語に親しみを持たせるのに有効である。

1)教室内でよく使う言葉:始めましょう、終わりましょう、休みましょう、わかりますか(はい、わか ります/いいえ、わかりません)もう  一度、いいです、だめです等

2)毎日の挨拶、会話表現:おはようございます、こんにちは、こんばんは、おやすみなさい、さような ら、ありがとうございます、すみません、お願いします

3)数字:1~10くらいまでのアラビア数字と漢数字 これらの言葉のプリント教材が教室内に用意されておりますのでご利用ください。

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